第72回 フィーリン・グルーヴィー ウンダーベルク第72回
フィーリン・グルーヴィー ウンダーベルク

文・達磨信


$Ehロックンロールなホットカクテル
  「ウンダーベルク」は、わたしに音楽を運んでくる。連載第64回『マエストロの味わいが響く傑作』で、このスピリッツをベースにした創作カクテルを紹介した。それには「グレート・コンポーザー」(偉大なる作曲家)と命名している。何故、音楽が響いてくるのか。
 
理由は単純だった。連載第18回『運命第4楽章』で、「ウンダーベルク」を飲むとダダダダーンとベートーベンの名曲が耳の奥で鳴り響くと語っていた。ダダダダーンがアタマのなかに刷り込まれてしまっているのだ。
 
バーでのはじめの一杯を「ウンダーベルク&ソーダ」(ハイボール)にすることがよくある。そんなときも“さあ今夜も、ダダダダーン"とこころのなかで呟いている。 余計なお世話だが、「ウンダーベルク・ハイボール」はちょっと濃い目のほうが旨い。バーテンダーには、ちょい濃い目、と伝えていただきたい。
 

 

 
昨年の秋。寒さが忍び寄って来た頃のことだった。仲良しのバーテンダーに「ウンダーベルク」を使ったホットカクテルを飲んでみたい、とまた我が儘(まま)を言った。嬉しいことに年が明けた今年1月、バーテンダーは微笑みを浮かべながら「ウンダーベルク」、「ラフロイグ10年」、ハチミツを使ったホットカクテルを創作して、わたしの来店を待っていてくれた。お年玉である。
 
温かい蒸気にはクセのある独特の香りがあった。口にした瞬間、衝撃を受けた。余韻を確かめる間もなく、ふた口目を啜る。薬草的でかすかなスモーキーさがありながら、ふくよかな甘みが広がるホットカクテルである。ウーン、と深く唸なった途端にアタマのなかで曲が鳴り響く。
 
激しいアコースティックギターの音。“タイム"と三回、訴えかけるように繰り返すシャウトではじまり、最後は余韻を残すことなく断ち切るようにシャウトアウトするサイモン&ガーファンクルの名曲『冬の散歩道』(原題・A Hazy Shade of Winter)だった。50年ほど前、わたしが小学生の頃に耳にして衝撃を受けた曲でもある。
 
『冬の散歩道』が響いたのは、麗しいハーモニーで知られる彼らの曲のなかで、この曲はロック調であるからだろう。ホットカクテルでまず冬を感じた。そしてレシピは「ウンダーベルク」に「ラフロイグ10年」をぶつけてきた。激情のロックンロールではないか。
 
もう詳しく説明するまでもなく「ウンダーベルク」は生薬的な香味で知られている。「ラフロイグ10年」の香味はスモーキーで、潮や磯の香を想起させ、ヨード様といった表現でも語られる。どちらも尖った強烈な個性を持つ。
 
でもそれだけではない。激情のロックンロールをハチミツがやわらかに抱擁している。だから激しくありながらもサイモン&ガーファンクルのしなやかな歌声なのだ。
 
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