第71回 ナポリ湾のような緑色した眼 カルーソー第71回
ナポリ湾のような緑色した眼 カルーソー

文・達磨信


$Ehファビアンとダルラの歌声に知る
  オペラ史上、偉大なテノール歌手のひとりエンリコ・カルーソー(1873-1921/伊語発音はカルーゾ)の名にたどりつくまでに随分と時間がかかった。今回は要した時間の通り、遠回しに話をすすめていくことにする。
 
きっかけをくれたのはオペラ界で活躍している人ではない。シャンソン、カンツォーネをはじめさまざまなジャンルの曲調を自分の世界へ見事に昇華させてしまうヴォーカリスト、ララ・ファビアンの歌声だった。わたしは20年以上、彼女の歌声に魅了されている。圧倒的な歌唱力はもちろん、とても魅力的な女性で、劇的ともいえる表現力に身体が電磁波を浴びたかのような感覚に包まれる。
 
何よりも素晴らしいのは、彼女自身が歌う悦びに満ちていることだ。聴く者の血を震わせるほどの情感にあふれ、それが悦びとして伝わってくる。
 
ファビアンは1970年、ベルギーに生まれた。父がベルギー人で、母はイタリア人。フランスを中心にヨーロッパやカナダではスーパースターでありアメリカでも人気があるのに、残念ながら日本ではあまり知られていない。未だ来日公演もなく、フランスとの関わりが深い知人にプレゼントされた数枚のCDやDVDで満たされるしかない。
 
誰かにファビアンの話をすると、おすすめの曲はとよく聞かれる。彼女の代表曲ともいえる『Je T'aime』をまず伝える。他には、と返されると、カバー曲である『Je Suis Malade』『Adagio』『Caruso』などを挙げる。
 
1990年代後半、『Caruso』を何度も聴くうちに、このカンツォーネの名曲は誰がつくったんだ、カルーソーってなんなんだ、と気になってしまう。
 
いまのように検索サイトが充実していなかったから、ファビアンのCDをプレゼントしてくれた知人にイタリア語の歌詞の内容を教えてもらうしかなかった。そして1986年にルチオ・ダルラ(1943-2012/ルーチョ・ダッラ)が作詞、作曲したものだと知る。
 
ダルラが、ナポリ生まれで48歳の若さで逝った偉大なエンリコ・カルーソーを偲んでつくり上げた、とても幻想的な詞である。
 
しばらくしてダルラの歌う『Caruso』を聴く。作者ならではの説得力と男ならではの渋さがあった。男女の違いはあるにしてもダルラ、ファビアンとも情感にあふれ、切なく語るように歌い上げている。どちらも圧巻だ。
 
面白いことに、ルチアーノ・パヴァロッティ(1935-2007)も『Caruso』を歌っていた。残念ながらダルラ、パヴァロッティともすでにこの世にいない。
 
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