第73回 ヴェネツィア、ハリーズ・バー ベリーニ第73回
ヴェネツィア、ハリーズ・バー ベリーニ

文・達磨信


$Ehその名はジュゼッペ・チプリアーニ
  イタリア・ヴェネツィア、サンマルコ広場のほど近く、エリザベスII女王も訪れた世界的に名高いバー・レストラン『ハリーズ・バー』がある。
 
石造りの白い外壁に木製の扉。小粋なデザインの窓がいくつかある。華美な装飾はなく、あくまですっきりと瀟洒な外観の隠れ家的なこの店に世界中から人々が集まってくる。観光名所といっていい。ほとんどの人たちがサーモンピンク色したカクテル「ベリーニ」(イタリア発音はベッリーニ)をオーダーする。
 
店内のつくりも美しい。丸椅子6席のバーカウンターは古典的でクールだ。あとはテーブル席がずらり。2001年にイタリア文化遺産に指定されたそうだが、確かに価値ある空間である。2階も本格レストランとして評価が高い。
 
この店にまつわるエピソードはたくさんあり、しかもかなり知られているが、今回はあえて創業者ジュゼッペ・チプリアーニの足跡を簡単に辿ってみたい。
 
創業は1931年5月13日。開業までの経緯が面白い。
 
エウロペアというホテルでバーテンダーをしていたチプリアーニには、独立してヴェネツィアでトップを競うような店をつくりたいとの願望があった。
 
あるとき、ホテルバーの常連客となっていたアメリカ人の学生で資産家の息子、ハリー・ピッカリングがしばらくぶりに顔を見せる。心配していたチプリアーニが「どうしていたのか」と声をかけると、ハリーは「お金がなくて、アメリカへ帰国することもできない」と答えたのだった。
 
チプリアーニは店の開業資金を懸命に貯めていたのだが、望みを達成する費用はあまりにも多額で、独立を諦めかけていた。そこで彼は気前よくハリーに1万リラを貸す。彼の気だての良さを信用したのだろうが、無謀としか思えない。
 
ところが数カ月経って、なんとハリーはヴェネツィアに戻ってくる。借りた金額を返しただけでなく、利子として4万リラを加えた計5万リラという大金をチプリアーニに渡したのだった。ハリーの多大な恩返しである。
 
ラグーン(干潟)に膨大な量の丸太の杭を打って生まれた奇跡の街でのこと、このくらいの話で驚いてはいけないのだろう。
 
おかげでチプリアーニは自分の店を開業。店名には迷うことなく信頼で結ばれたアメリカ人青年の名をつけた。それが『ハリーズ・バー』である。
 
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